- 病理革命
PCR検査の盲点(No.5)
新型コロナウイルス感染では、日本の「PCR検査数が少ない」「検査してもらえない」「もっと検査を増やすべきだ」といった議論が毎日行われています。そのわりにはPCR検査の盲点や危うさを、誰も詳しく解説していないために誤解もたくさんあります。PCR検査の盲点をわかりやすく解説します。
PCR検査とは、ポリメラーゼ連鎖反応(ポリメラーゼ チェーン リアクション)の頭文字をとってPCRと呼ばれています。これは遺伝子(DNAかRNA)が複製されていく反応を促す酵素を使って、鎖のように反応を続けていくことで遺伝子情報を増幅して検出する方法です。この検査技術は確立されていて検査機器も問題なく安定し供給されています。では何が「盲点」で「危うい」のか? *検体が十分とれているか:鼻の穴から綿棒のようなもので採取するときに、しっかりゴシゴシとれているか。
*検体を処理するときにDNAやRNAがしっかり分離できているか。(コロナはRNA)
*他からの混入はないか:陽性検体を触ったもので陰性検体を検査したら混入で陽性になる
*酵素反応を阻害する物質はないか
つまりは、しっかりとウイルスが存在している部分の粘膜や粘液をとって、コロナウイルスのRNAだけを分離できて、酵素反応が阻害されずにコロナRNAを増やせるか、が重要なのです。 **慣れないヒトが鼻からちょこっとぬぐったところにウイルスがいなかった
**ぬぐったものを処理したらコロナRNAがうまく分離できなかった
***コロナウイルスがいないのに、検査用具からコロナRNAが混入してしまった
**RNAを増幅する酵素反応を阻害する物質が検査中に入ってしまった
これらの関門のどれか一つにひっかかても、PCR検査は失敗です。**の関門では「陰性」になってしまいますし、***のところでは陰性のヒトが陽性になってしまします。本当は陽性なのに「陰性になること」を「偽陰性」といいます。本当は陰性なのに「陽性になること」を「偽陽性」と言います。どちらもダメです!
検査が「陰性」と言われたヒトが実は「偽陰性=陽性」だったのに、安心してしまって外出したり三蜜状態を作ったりしたら、PCR検査を増やしてもコロナ感染が収まらない、逆に感染が増えてしまうことになります。焦って不慣れなPCR検査の数を増やすことは、とても危険な考え方になってしまいます。どうかPCR検査の盲点と危うさも理解してください。